コンタクト先リストを作ってからメールや電話で1件ずつアポ取りをして、やっとミーティングの日が決まってホッと一息・・としたいところですが、ミーティングでは営業としてやらなければならない重要なこと(=戦略的アプローチ)があります。
今回は、この点について紹介していきます。
見込み客の役割を見極める
ミーティングでは、事前に設定していたテーマについて情報交換をします。
そして、ミーティングの終盤でタイミングを見計らって自社の商品やサービスを軽く紹介します。
ここで、相手が特にネガティブな反応を示さなければ、営業担当者は「見込み客」に格上げして本格的なコンタクトを継続していくという流れになります。(最初から明らかな興味を示してくれる人もたまにはいます。)
自社の商品やサービスについて時間をさいて説明する場合は、通常複数の人たち(=利害関係者、ステークホルダー)が参加してきます。
このときに、営業担当者がやらなければならない重要なことがあります。
営業活動を効率的に進めるための戦略的アプローチとして、ミーティングの初期の段階で関係者各人の役割を即座に見極めること。
つまり、営業にとって大事なのは相手の「役職」ではなくて「役割」なのです。
営業職として経験を積めば、最初のミーティングで会話や質問をしながら相手の役割を即座に見極めることができるようになります。
それぞれの役割は以下のように分類できます。
ゲートキーパー(Gatekeeper)
組織内外の人・情報をつなぎ合わせる役割を担う人という意味で、営業担当者が最初にコンタクトした際に、会う・合わないを決める人です。
インフルエンサー(Influencer)
最終的な決定権は持っていませんが、決定権者に影響を与えるような意見を述べる人。関係者の中に少なくとも1人はいることが多いです。ここから、テクニカル・インフルエンサー(CIO、ITマネージャー)、ユーザー・インフルエンサー、コーチ・インフルエンサー、エグゼクティブ・インフルエンサー(経営陣)といった役割に細分化することもあります。
ユーザー(User)
商品やサービスを実際に利用する人。通常、ユーザーは使い慣れたシステムを変えることに消極的であるため、営業担当者はユーザーの観点から商品やサービスの強みをデモで示す必要があります。
決定権者(Decision Maker)
予算や契約書締結の最終決定に影響を及ぼす人。経営陣、幹部、COOなどで最初のうちはミーティングに出てきませんが、営業担当者はなるべく早い段階で積極的にアプローチする必要があります。
導入推進者 / 旗振り役(Champion)
営業担当者が商品やサービスを売ることを手助けしてくれ、決定権者へのつながりを作ってくれる人。商品・サービスを以前使いこなしていたり、別の会社で導入した経験や専門知識をもっていることが多く、決定権者が何を考えているかについて教えてくれます。
コーチ(Coach)
ミーティングの場で参加者間の対立や障害になっていることを明らかにして解決策を探す方向に導く人。
提唱者(アドボケイト)(Advocate)
営業担当者がすすめる商品やサービスを積極的に推奨して、ミーティング参加者を効果的にナビゲートしてくれる人。
反対者(Blocker)
文字通り、営業担当者がすすめる商品やサービスに反対する人で、ユーザーの中にいる場合や、経営陣の中で競合他社の上層部とつながりがある人がいる場合もあります。営業担当者が直接説得するよりも、導入推進者、コーチ、提唱者の力を借りる方がスムーズにいくことが多いです。
※ 1人が複数の役割を担う場合や複数の人が同じ役割を担う場合もあります。
見込み客の動機を見極める
次に、営業担当者はミーティングの初期の段階で見込み客の動機を見極めることが重要です。
なぜなら、ベストな商品・サービスを選択したいという思いは同じであっても、関係者各人の動機は様々であることが多いからです。
動機を見極めることによって、営業担当者は何に重点を置いて説明すべきかが見えてきます。
それぞれの動機は以下のように分類できます。
ソーシャル(Social)
商品・サービスの購入が組織内の利害関係者にどんな影響を与える可能性があるかを確認・検討することを重視。
エコノミック(Economic)
収益・コストへの影響の観点から、商品・サービスの実用性を重視。(キーワード:「コスト削減」「実用性」)
オペレーショナル(Operational)
使い勝手や効率性に目を向け、既存システムとの親和性を重視。(キーワード:「使い勝手」「効率性」)
クオリティ(Quality)
機能性といったテクニカルな点や保証期間といった品質に関わる点を重視。(キーワード:「機能性」「品質」)
ポリティカル(Political)
商品・サービスの決定が及ぼす組織内の個人的なコストや利益を重視。
私の経験では、エコノミック、オペレーショナル、クオリティの3つの動機を見極めることができれば十分で、関係者各人が所属する部署によって変わってきます。
たとえば、ITの部署であれば、エコノミックとクオリティの動機が重視され、ユーザーの部署であればオペレーショナルの動機が重視される傾向が強いといった具合です。
動機については、営業担当者が直接質問することによって比較的簡単に知ることができます。
まとめ
以上のことをまとめると、営業にとって大事なことはミーティングの初期段階で「役割 × 動機」を見極めることです。
これが、営業を成功に導く重要な要素のひとつとなります。
まず「役割」の点からは、最初はゲートキーパーとの関係を良くしてから、次にインフルエンサーと導入推進者 / 旗振り役とのコンタクトの割合を増やしていくと同時に、決定権者にはなるべく早い段階で会うという戦略的アプローチがおすすめです。
上に書いたように、決定権者は経営陣・幹部のことが多いので、営業マネージャー(上司)、グローバル・ヘッドあるいは日本オフィスの社長を担ぎ出してミーティングをアレンジするようにします。
次に「動機」の点からは、ミーティングに参加する顔ぶれによって、プレゼン資料で焦点を当てるべきポイントを微調整していきます。
それでは次回、相手の性格を知って、それぞれの性格タイプにどうアプローチしていくか(「性格診断ゲーム」)について紹介します。