新年早々の2022年1月4日(火)午前6時9分頃、小笠原諸島の父島近海を震源とするM6.1の地震が発生し、母島で震度5強を観測しました。
小笠原諸島周辺で、震度5強以上の揺れを観測したのは、2015年5月30日に発生した小笠原諸島西方沖を震源とするM8.1の地震(下図)以来です。
今回は震源の深さが77kmでしたが、2015年5月の時は震源の深さが682kmと非常に深い所で発生した「深発地震」でした。
2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに、日本は地震活動期に入ったと言われています。
そこで、今回は地下深い所で発生する「深発地震」と大地震の関連性について検証してみました。
深発地震とは
まず、深発地震とは以下のように定義されています。
一般に深さ100キロメートルよりも深いところで発生する地震のことを指す。別のプレートの下に沈み込む海のプレートの内部で発生する。震源は700キロメートルの深さに達するものもあるという。
(2015年6月1日付 日本経済新聞記事より)
以下に示すように、深発地震では、沈み込む海洋プレートに沿って地震波が伝わりやすいという性質が顕著に現れるため、通常の地震の震度分布とは異なり、震源の真上より震源から遠く離れた場所で異常に揺れが大きくなることがあり、この現象またはその地域を「異常震域」と言います。
それでは、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震を例にとって、深発地震との関連性を見てみましょう。
深発地震と東日本大震災の関連性
気象庁の「震源データ」には、日本周辺から遠く離れたフィジー、バヌアツ、インドネシア、パプアニューギニア、アフガニスタン、アルゼンチン、ブラジルなどで発生した地震の震源データが含まれていますので、これらは除外しています。
東日本大震災前に発生したM5.0以上の深発地震の回数を見ると、以下のグラフが示すように、2010年8月に5回発生してから7か月後の2011年3月に東日本大震災(M9.0)が発生しています。
深発地震と熊本地震の関連性
熊本地震前に発生したM5.0以上の深発地震の回数を見ると、以下のグラフが示すように、2015年6月に5回発生してから10か月後の2016年4月に熊本地震(M7.3)が発生しています。
深発地震と北海道胆振東部地震の関連性
北海道胆振東部地震前に発生したM5.0以上の深発地震の回数は以下のようになっています。
以下のグラフが示すように、2017年1月以降特に回数が多い月はありません。3回発生した2018年4月にあえて注目した場合は、5か月後の2018年9月に北海道胆振東部地震(M6.7)が発生しています。
北海道胆振東部地震については、東日本大震災や熊本地震と比べて深発地震との関連性はそれほど強くないと言えます。
2020年以降の深発地震から見えてくること
それでは最後に、2020年1月以降に発生したM5.0以上の深発地震の回数を見てみましょう。
2021年8月までは0 ~ 3回と比較的静かな状況が続いていましたが、2021年9月にいきなり6回、10月も4回の深発地震が発生しました。
参考までに、2021年9月に発生した深発地震を以下にまとめています。
9月3日 | 05:26 | 435km | M5.6 | 千島列島 |
19:14 | 628km | M5.9 | オホーツク海南部 | |
9月12日 | 11:32 | 399km | M5.2 | オホーツク海南部 |
14:32 | 454km | M5.1 | 鳥島近海 | |
9月14日 | 07:46 | 385km | M6.0 | 東海道南方沖 |
9月29日 | 17:37 | 394km | M6.1 | 日本海中部 |
実際、上記の北海道胆振東部地震の場合と同様に、2020年7月に3回発生してから7か月後の2021年2月に福島県沖でM7.3(震度6強)、2020年12月に3回発生してから3か月後の2021年3月に宮城県沖でM6.9(震度5強)の地震が発生しています。
また、2021年9月に6回発生した後は、2022年1月に日向灘でM6.6(震度5強)、3月に福島県沖でM7.4(震度6強)の地震が立て続けに発生し、2021年10月に4回発生した後は、6月に能登半島でM5.4(震度6弱)の地震が発生しています。
(出所)気象庁「震源リスト」https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/daily_map/index.html より筆者グラフ作成
以上の経験則から、深発地震が1か月間で3回以上発生した場合は、その後1年以内に大きめの地震が発生する可能性が高いことがわかります。
さいごに
今回は、人的被害を伴った大地震として上記の3つしか採り上げませんでしたが、もっと過去に遡って調べれば関連性の有無がより明らかになるでしょう。
また、グラフの作成条件は、深さ200km以上かつM5.0以上で設定しましたが、深さ300km以上にした場合やM4.5以上にした場合には違う結果になりますので、機会があれば調べてみようと思います。
引き続き、日頃の災害に対する備え(防災グッズ、備蓄品、持出品、連絡方法・避難場所・避難経路の確認など)が求められます。