2020年5月に海外勢による米国株の買い越し額は、過去最高の797億ドル(約8兆円)に達しました。
NYダウの推移を振り返ってみると、海外勢の買いを背景に5月14日の22,789.62ドルから6月8日の27,580.21ドルまで4,800ドル近く上昇した後、6月11日に窓を開けて急落し6月15日に一旦24,843.18ドルまで下げた後は月末までレンジ内でのもみ合いに終始しました。
果たして6月の海外勢の動きはどうだったのでしょうか?
8月17日に米国財務省が発表した6月の対米証券投資(TICデータ)によると、海外勢の米国株の買い越し額は285億ドル(約3兆円)でした。
前月比で見るとマイナス64%と大幅に落ち込みましたが、それでも過去2年間では前月(5月)に次いで2番目に大きな買い越し額となっています。
国別の動向を確認すると
前回のブログで取り上げた6か国の動向をグラフにすると、以下のようになります。
5月と異なり、金額的に突出した国がないのが6月の特徴です。
それでは、国別に見てみましょう。
私の個人的な分析で、2020年5月の数字については以下のようにグループ分けしました。
- 売り越してきたポジションを調整するための買い:イギリス、ケイマン諸島
- 相場感に基づく買い:日本、サウジアラビア、香港、スイス
- 3月または4月に大きく売越した分の一部調整の買い:カナダ、シンガポール、フランス
それぞれのグループについて6月の動向は以下のようになっています。
- イギリス、ケイマン諸島:5月に売り越してきたポジションを調整するための買いがほぼ一巡 → 6月は小幅な金額に
国 | 2019 | 2020/1 | 2020/2 | 2020/3 | 2020/4 | 2020/5 | 2020/6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
イギリス | -157 | -11 | 26 | -76 | -310 | 289 | -5 |
ケイマン諸島 | -359 | -54 | 14 | 189 | 130 | 85 | 17 |
- 日本、サウジアラビア、香港、スイス: 3~5月に相場感に基づく買い → 6月に高値圏で一部を利食い売り
国 | 2019 | 2020/1 | 2020/2 | 2020/3 | 2020/4 | 2020/5 | 2020/6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 0 | -5 | -15 | 28 | 25 | 96 | -36 |
サウジアラビア | 25 | 1 | 1 | 34 | 101 | 44 | -52 |
香港 | 70 | 15 | 30 | 103 | 50 | 6 | -4 |
スイス | -44 | 14 | -5 | 159 | 32 | 5 | -24 |
- カナダ、シンガポール、フランス: 5月に3月または4月に大きく売越した分の一部調整の買い → 6月も買い継続
国 | 2019 | 2020/1 | 2020/2 | 2020/3 | 2020/4 | 2020/5 | 2020/6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
カナダ | 211 | -88 | 37 | -207 | 23 | 98 | 61 |
シンガポール | 165 | 60 | 13 | -26 | -109 | 46 | 13 |
フランス | -3 | 84 | 42 | -267 | 31 | 38 | 34 |
7月の数字は、9月16日に予定されています。7月は、前半に再び上値を試す展開になりましたが、その後月末まで膠着状態となり出来高もあまり増えなかった中で、海外勢がどのように動いたか楽しみに待ちましょう。
米国株の保有残高を見てみると
米国財務省は、上に書いた国別の買い越し・売り越しの数字(フロー)だけでなく、保有残高(ストック)も年2回発表しています。
直近の数字は、2020年4月末に発表された2019年6月末時点の数字ですが、主要国の保有残高は以下のように推移しています。
保有残高が1兆ドル近辺のケイマン諸島、イギリス、カナダはこの10年間で保有残高が3倍以上(特に、ケイマン諸島は3.7倍)増加しています。
また、日本については、この10年間で2.7倍増加しています。一方で、中国は、2015年6月末のピークから2019年6月末まで42%減少しているのが目立ちます。
さいごに
米国財務省の資料から、以下のいくつかのグラフを抜粋しました。
米国株の保有残高に占める海外勢の比率は14%ですが、実際にマーケットに与える影響はかなり大きいと言えます。この点の分析については、別の機会にしたいと思っています。
海外勢のうち、公的部門の比率は約13%となっており、大部分は民間部門です。
米国有価証券の保有残高の内訳を見ると、米国債と米国株の比率は国によって大きく異なっています。日本や中国は米国債の比率が高いのに対して、カナダは米国株の比率が高いのが目立っています。