世界的なコロナ禍の収束がまだ見通せない中、米国株は2020年3月の安値から驚くほどの回復・上昇過程を辿っており、2021年8月16日にNYダウは史上最高値35,631.19ドルをつけて35,625.40ドルで引けています。
テクニカル分析でよく使われるフィボナッチ・リトレースメントによると、次の目標値は以下のチャートに示したように1.618倍戻しの36,585.91ドルになります。
フィボナッチ比率については、以下の記事をご参照ください。
そうは言っても、上がり続ける相場はどこかで息切れし、場合によってはバブルの崩壊を迎えることは過去の歴史が証明しています。
そこで、今回は2021年後半の米国株相場を占ういくつかのポイントについて見ていきましょう。
通貨流通高の増加に変化の兆しか?
2020年3月のコロナショック以降に、FRB(米連邦準備制度理事会)が大規模な金融緩和を行なった結果、実際に市中に出回っているお金の量である「通貨流通高」がコロナショック前の1.8兆ドルからほぼ右肩上がりに増えていき、足元では2.18兆ドルレベル(+20%強)まで達しています。
まさに、「じゃぶじゃぶにあふれたお金」によって昨年来の株高が演出されているわけですが、今年(2021年)に入ってから、通貨流通高の増加に若干の変化が見られます。
具体的には、6月10日〜16日までの週と翌6月17日〜23日までの週および7月15日〜21日までの週と翌7月22日〜28日までの週に、通貨流通高が前週比で減少していることです。
これは単にテクニカルな調整なのか、あるいは将来のテーパリング(段階的な金融引き締め)に向けて実際にお金の量を絞り込んでマーケットの反応を試そうとしたのかはわかりませんが、いずれにせよ今までの右肩上がりの増加に変化の兆しが出てきたことは確かです。
懸念される足元のインフレ動向
消費者物価指数(CPI)から価格変動の激しいエネルギー価格や食品価格を取り除いたコア消費者物価指数(前年同月比)は、FRBがインフレ指標として重視していますが、直近2か月のコア消費者物価指数は1991年以来の高水準となっています。
また、ワクチン接種の進行や巨額の財政出動によってインフレが加速するとの観測を背景に、米国10年債利回りは年初から上昇し、3月18日に2020年1月以来の1.75%の水準に達しました。(同日のNYダウは153ドル安)
ただし、最近のデルタ株の感染拡大で景気回復に伴うインフレ加速の観測が弱まったことや金余りによる米国債の需要増加、米銀によるポートフォリオのリバランスによる長期債の買いなどを背景に、米国10年債利回りは8月初めに1.2%台を割り込み、足元では1.3%台で推移しています。
上記のコア消費者物価指数は月次の数字であるためリアルタイム性に欠け、一方、米国10年債利回りは需給要因によりコロナ発生前の平均インフレ率を下回る水準まで低下しているため、インフレ指標としては参考にしにくい状況です。
そこで、より忠実に市場の期待インフレ率(予想物価上昇率)を示す指標として米国10年物ブレークイーブンレート(ブレークイーブンインフレ率)が挙げられます。
以下に、週次の通貨流通高およびその増減、米国債10年物ブレークイーブンレートとNYダウの動きをグラフにまとめましたが、以下のことが読み取れます。
- 通貨流通高の増加幅が前週比で減少、あるいは通貨流通高そのものが前週比で減少する場合は、NYダウは横ばい〜下落傾向となる
- 米国債10年物ブレークイーブンレートが2.5%を上回ってくると、インフレ懸念でNYダウに下落圧力がかかる
米国債10年物ブレークイーブンレートについては、以下の記事でも触れていますので、ご参照ください。
世界のコロナ感染者数に注意
アメリカではワクチン接種が進み、新規感染者数が年初の水準と比べて落ち着いていますが、足元では再び増えつつある状況で今後はデルタ株の感染状況次第だと言えます。
一方、ヨーロッパでは4月初めにかけてコロナの新規感染者数が再拡大したため、世界経済の回復の不透明感から3月23日にNYダウは308ドル安となりました。直近でもやや増加傾向となっているため、欧米ともにワクチン接種の進行状況とデルタ株の拡大状況の双方をにらみながらの展開になりそうです。
天体サイクルから見た要注意期間
相場に影響を及ぼすことが多い水星の逆行は、以下のチャートでグレーで示していますが、2021年はあと1回(プレシャドー:9月7日〜、逆行期間:9月27日〜10月18日、ポストシャドー:11月3日まで)あります。
また、金星と天王星のアスペクト形成日もトレンド転換を探るために重視されています。年内に9回ありますが、水星の逆行期間内およびプレシャドーの期間内にアスペクトを形成するのは2月7日、6月13日、9月23日の3回です。
水星の逆行期間内で形成された2月7日のスクエア、6月13日のセクスタイルについては、下記のチャートで破線の矢印が示す期間内にボトムをつけて反転する動きとなりました。
次回のポイントは、プレシャドーの期間内で形成される9月23日のオポジションですが、今までのように一旦下げてからボトムをつけて反転するのか、あるいは天井をつけて下落局面に転じるのか(→ さらにはバブル崩壊につながるのか)、注目すべきポイントです。
さいごに
2021年の天体サイクルの最大の注目点は、土星と天王星が2月18日、6月14日、12月25日にスクエアを形成することです。土星と天王星のスクエアは、強い緊張関係を生み出す傾向が見られ、過去を振り返ると実際そのような事象が発生しています。
・1930年2月22日、4月9日、12月13日、1931年7月21日、10月17日 ⇨ 1929年10月24日世界恐慌(NYダウ安値:1932年7月8日)
・1951年12月8日、1952年4月18日、10月16日 ⇨ 1950~53年朝鮮戦争、東西ブロック緊張
・1975年10月4日、10月8日、1976年7月2日、1977年2月24日、4月23日 ⇨ 世界経済動揺期
・1999年7月8日、11月14日、2000年5月13日 ⇨ 2000年4月13日ITバブル崩壊
以上のように、実際にスクエアを形成する日よりも形成する「年」がポイントです。2021年はどのような事象(緊張関係)が発生するのか予断を許さない状況です。