「美術系大学を卒業してメシが食える」アートビジネスとして確立させる秘策

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先日、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏による”「美大でメシが食えない」を変えたい京都造形芸術大教授〜学生の作品販売でキャリア支援”の記事を読みました。

わたしも絵が好きで高校で美術部に所属していましたが、大学はまったく違う学部に進みました。なぜなら、「美大を卒業しても画家としては生活できない」ということが世間の常識だったからです。

それ以前に、うちは普通のサラリーマン家庭だったので、とても親に美大に行きたいと言えるような雰囲気ではありませんでした。

ですから、この記事のタイトルを見た時に「やっぱり今でもそうなんだ」というやりきれない気持ちと「どんな取り組みをしているんだろう」と。そして学生さんの将来のこともあり「ひとごとではない」とあれこれと考えてみました。

目次

美大生に必要な「アートビジネス」のセンス

上記の記事では、学生の作品を学内や百貨店で展示・販売する取り組みについて書いてありましたが、わたしなりに考えたアイデアは以下の通りです。

美術大学がセールスの基本となる科目を一般教養に組み入れる

まずは、美大側の取り組みについてのアイデア・・

卒業後もアートで生活できるようになるには、自分の作品を自分で売る力をつける必要があります。

つまり、自分の作品(商品)を自分のお店でセールスとして売る営業力です。

たとえば・・

自分の作品を展示していたら、誰かがじっくりと見始めた・・

・一般人であればどんな言葉をかければいいのか・・
・一言かけた後にどんな話をして興味を引きつけたらいいのか・・
・購入の意思があるかどうかをどうやって見抜いたらいいのか・・
・購入の意思決定を促すタイミングは・・

など、会社でセールスとして働いているのと似たような場面が想定されます。

具体的には、学生がセールスの基本を身につけることができるように、ビジネス心理学、マーケティング、そしてより広い知識として経済や経営について、大学側がそれぞれの分野の専門家や実務家を講師として招いた授業を一般教養として組み入れたらどうでしょうか。

さらに、プレゼン能力やコミュニケーション能力を高めるための実践的な授業もあればもっといいでしょう。

SNSで発信する

次に、学生側の取り組みについてのアイデア・・

今や「SNSなくしてマーケティングなし」と言われるほどSNSが強力なツールとなっています。

自分の作品を集めた「マイギャラリー」を広く宣伝するために、そして何よりも作品を制作した「自分ブランド」を売り込むための手段としてYouTube、Twitter、InstagramやブログといったSNSを駆使して発信することが必要です。

さらに英語で発信すれば潜在的なマーケットはもっと広がるでしょう。

公共施設に絵を導入する

そして、アートビジネスとして確立するための秘策は・・

美術館や百貨店に学生たちの絵を展示して見に来てもらう「待ちの姿勢」ではなく、目に触れる機会を積極的に増やす「攻めの姿勢」です。

具体的には、病院、介護施設、養護施設、老人ホーム、図書館、学校といった公共施設に学生たちの絵を飾る取り組みが考えられます。

この場合、自治体や役所とのタイアップも必要ですね。

たとえば、病院。

精神的に病んでいる人たちにとって、絵が効果的であることはすでに実証済みです。コンクリートだけの病室に絵を飾ることによって心が安らぐ、そして治療までの期間が短くなる・・まさにヒーリング・アート、アート・セラピーです。

病院の待合室に毎日生け花を飾っているのと同じように、毎月飾る絵を変えるのはいかがでしょうか。

この場合、絵を「レンタル」という形で借りることにすれば買わなくてすむので、金銭的なハードルはかなり低くなります。さらに、対象を公共施設に限らず、民間のホテルや会社まで広げることも可能です。

そして、絵を飾っている公共施設や絵を見た人が気に入れば買ってもOK。このような絵のレンタルビジネスによって、学生たちの絵を循環させる仕組み・流れができあがる・・

学生たちは、もちろん無名に等しいですが、こんなマーケットができれば最高ですね。

まとめ

みずみずしい感受性によって絵に注がれた若いエネルギーや色彩・構図の躍動感は巨匠の絵に負けないくらい伝わってくるはずです。

その人の魂のエネルギー、情熱を感じるとみんな感動しますよね。

日本人の多くが好きな印象派の絵・・このルーツをたどると行き着くところは「日本人の美意識」。

この誇るべきDNAを引き継ぐのは今の美大の学生たち。

学生たちの絵にもっと身近に触れて、彼らと気軽にコミュニケーションをとる機会が増えれば、アートに魅力を感じる人たちが日本にもっと増えて彼らを育てていこうという土壌ができるはずです。

このようなマーケットが生まれることをめざすアートビジネスの誕生・活性化を願うばかりです。

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