「日本美術を見る眼 〜東と西の出会い」高階秀爾著 x 京都文化博物館

先日、京都文化博物館で開催中の特別展「百花繚乱 ニッポンxビジュツ展」(8/25〜9/29)に行ってきました。

40点ほどの展示作品の中で、狩野派の代表作「洛中洛外図屏風」は豪華な金色が迫力満点!

最近読んだ「増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い (岩波現代文庫)」(高階秀爾 著)に書かれていた以下の文章を思い出しながら鑑賞してみました。

・・洛中洛外図は、ひとつの固定した視点から眺められた都市図ではなく、都市のさまざまの部分を、つまり複数の視点による都市の姿を画面の上に並置したものなのである。・・・われわれの日常の体験においても、高い所から見下ろした時の方が町の構成はよくわかるが、洛中洛外図の画家は、まさしくそのような視点によって、都市の空間構造を見る者に伝えてくれるのである。 P112-113

この本は、画家の視点が一定の場所に固定されている「遠近法」光の当たり方を陰影で表現する「明暗法」を特徴とする西洋美術と対比させながら、洛中洛外図を鑑賞するツボをわかりやすく教えてくれます。

実際に美術館に行って絵を見たときに「そういうことだったんだ!」と確認できるのが楽しいですね。

人々もそれぞれ丹念に描かれていて、まるで自分が京都の町の大パノラマを一望できる展望台にいるかのような気分にさせてくれます。

それにしても、今のように飛行機やドローンがない時代に、どうやって高いところから見下ろすような鳥瞰図を描くことができたのか不思議ですよね。

次に印象的なのが、琳派の屏風絵「松桜図屏風」と「波濤図屏風」。

著者は、西洋美術と比較して日本美術には「切り捨ての美学」「クローズアップの手法」といった特質があることも書いています。

切り捨ての美学
・・画面のなかで不用なもの、余計なものを覆い隠して、主要なモティーフだけを浮き立たせるという機能を果たしていることである。P118

クローズアップの手法
このような表現は、空間が画面のなかだけでは完結せず、さらにその外部にも連続して拡がっていることを暗示するとともに、構図法の上から見れば、西欧の「写実性の原理」による統一的な画面構成には見られない大胆奇抜な構成を見せることとなる。P123

今まで何気なく眺めていただけの日本美術も、実は奥が深いということがよくわかります。

さて、個人的な印象ですが・・

・「松桜図屏風」は、北斎の「遠江山中(とおとうみさんちゅう)」や「常州牛堀」の対角線を利用した大胆な構図
・「波濤図屏風」は同じく北斎の「神奈川沖浪裏」や「甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)」に描かれた波頭

を想起させます。

北斎は、35歳のときに京都の琳派に影響を受けて江戸で誕生した江戸琳派の頭領になっているので、当然、琳派の絵からインスピレーションを得ていたのでは・・と(勝手に)思っています。

最後に、浮世絵。

11点しかありませんでしたが、前から見たいと思っていた国芳の「相馬の古内裏(ふるだいり)」や写楽の「市川鰕蔵の竹村定之進」を間近で鑑賞。

特に、写楽はわずか10か月しか活動していない謎の浮世絵師。見た瞬間、灰色で輪郭線を描いているので黒で描かれた目や口元が強調され役者の気迫が感じられました。

背景のきらきらとした光沢のある雲母摺(きらずり)もじっくり。

出口に近いところでは、北斎の「神奈川沖浪裏」がしっかりと最後を飾っています。

著者は、浮世絵についても以下のように述べています。

十九世紀の後半、西欧の画家たちに日本の浮世絵版画が広く好まれ、大きな影響を与えたことはよく知られているが、その影響の重要な側面のひとつは、このような大胆奇抜な構図法によるものであった。P19-20

ということで、世界的に高く評価されてる「琳派」や「浮世絵」を日本人の美意識の特質といった観点からわかりやすく解説しています。ぜひ美術館を訪れて、本に書かれていることを実体験してみてください!



目次
閉じる