前回の続きです。
2020年5月に入ってから、震度4以上の地震がすでに7回発生しています。特に、この1週間(2020年5月17日〜5月23日)は、5回も発生しています。
(出所:日本気象協会tenki.jp)
ちなみに、気象庁震度階級関連解説表によると、震度4の人の体感・行動について「ほとんどの人が驚く。歩いている人のほとんどが、揺れを感じる。眠っている人のほとんどが、目を覚ます。」と記されています。
今年は地震が多いですが、実際に2009年からのデータを見るとおそろしいことがわかりました。
震度4以上の地震の回数を比較すると・・
過去のデータと比較するために、2009年以降の同じ期間(1月1日〜5月24日)で以下の表を作成しました。
震度7クラスの大地震は、色をつけた2011年、2016年、2018年に発生しましたが、1月1日〜5月24日の期間でみると震度4以上の地震が20回以上発生していたことがわかります。
今年もすでに24回発生していますので、大地震が発生するリスクが高いと予想されます。
年 | 回数 | 大地震 | 最大震度 | 月の満ち欠け |
---|---|---|---|---|
2020 | 24回 | ?? | ||
2019 | 18回 | |||
2018 | 23回 | 9月6日 北海道胆振東部地震(M6.7) | 7 | ●9月10日 |
2017 | 14回 | |||
2016 | 24回 | 4月14日 熊本地震(M6.5) 4月16日 熊本地震(M7.3) | 7 | ◐4月14日 |
2015 | 4回 | |||
2014 | 2回 | |||
2013 | 8回 | |||
2012 | 11回 | |||
2011 | 42回 | 3月11日 東日本大震災(M9) | 7 | ●3月5日 |
2010 | 15回 | |||
2009 | 11回 |
以前、月の満ち欠けと地震の関係について書きましたが、2011年は新月から6日後、2018年は新月の4日前、そして2016年については上弦の月の当日に大地震が発生しました。
また、太陽の黒点数が少ない時期に大地震が発生する傾向があることも統計的にわかっています。
出所: http://www.sidc.be/silso/monthlyssnplot
複合災害リスクのシミュレーション
内閣府の防災情報のページを見てみると今まで地震・津波対策として専門家がいろいろと対策を考えて資料を作成してきたことがわかります。
この中で、首都直下地震対策の「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画(概要)」には具体的なシナリオのもとで対応策がまとめられています。
ただ、この対応策は2019年の5月に作成されていますので、今回のコロナとの複合災害リスクのシミュレーションが含まれていません。
たとえば、コロナの第2波、第3波が近い将来に発生した場合に、今回のような外出の自粛を含む非常事態宣言のもとで地震の被害が甚大な地域に「全国からの最大勢力の広域応援部隊の投入」が果たして可能なのでしょうか。
また、被災地には「災害拠点病院が162病院存在し、これらの医療資源を最大限活用することが必要」と書いていますが、コロナが発生していたら病院はそれだけで手一杯なのではないでしょうか。
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会が2020年5月18日に発表した調査結果によると、全国の4332病院のうち有効回答があった1049病院について、4月の利益率が前年同月比でマイナス9%、コロナの患者を受け入れた269病院では前年同月比でマイナス11.8%と悪化しているというニュースが流れていました。
すでに病院の経営悪化、医療現場の危機という状況になっているときに、大地震が起きればどうなるのか想像するだけでもおそろしいです。
「首都直下地震では、被災地方公共団体及び家庭等で備蓄している物資が数日で枯渇する」とも書いていますが、今回のコロナ危機でわかったように備蓄したくてもできないモノも出てくるように思います。
さらに、ネット通販も政府による緊急輸送ルートの確保が実施された場合に、物流がどうなってしまうのかわかりません。
波及的な影響のシミュレーション 〜北海胆振東部地震の教訓
2018年の北海道胆振東部地震では、大規模な停電による波及的な影響が発生しました。
ゆうちょATMが全域停止になったり、地銀2行の半数以上の店舗で営業中止になってりして金融に影響が及びました。いくらキャッシュレスの時代になっても、災害時にはやはり現金が必要となりますね。
これ以外にも、信号機が消えることによる交通マヒ、コロナの重症患者のための人工呼吸器、食料を保存している冷蔵庫、夏や冬の場合のエアコン、スマホの充電、テレワークの前提となるパソコン、高層マンションのエレベーターなど、停電による波及的な影響は数えきれません。
これらの影響を含めたシミュレーションをして初めて対応策が完成したといえると思います。
さいごに
「国は、被災都県からの具体的な要請を待たないで、必要不可欠と見込まれる物資を調達、輸送 手段・体制を確保し、プッシュ型支援で被災都県に緊急輸送」とも書いています。
今回のコロナの対応策では、国の対応が後手に回っていたため、よりスピード感が求められる複合災害時に、果たして国(つまり、首相)がリーダーシップを発揮してきちんと対応できるのか、一抹の不安を感じます。
これからの時代は、住民に直接対峙している地方のトップにある程度の権限を移譲して、その地域の災害状況をじかに把握しながら臨機応変に対応していく形がふさわしいといえるでしょう。